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眠れるヒント:第1回なかなか寝つけないときの睡眠のヒント①

私たちは、睡眠に関する"間違った思い込み"や"かくれ悪習慣"を持っています。これが、睡眠の悩みがなかなか解消できない原因のひとつ。そこで、正しい睡眠のためのヒントをご紹介。良い睡眠を手に入れるカギは、ご自身にあった快眠法を見つけること。朝型の人がいれば、夜型の人もいるように、睡眠のタイプはそれぞれです。「今」感じているお悩みについて無理なくできそうなヒントから始めてみましょう。年齢とともに、寝つきが悪くなってきた。ストレスや心配事で、どうも寝つけない。そんな夜は、無理に眠ろうとせずに、睡眠のヒントを試してみてください。

目次

 

「寝つけない」のではなく、
「まだ眠る時間ではない」のかも?

●眠くないのに、布団にいるのは逆効果。
なかなか寝つけないという方の中には、かなり早い時間から、布団に入っているケースが多くみられます。あまり知られていませんが、必要な睡眠時間は年代によって異なり、成人は6時間以上、高齢者は床上時間を8時間以下にすることが推奨されています。(「健康づくりのための睡眠ガイド2023」厚生労働省より)必要以上にながく布団に入ってだらだらと時間を過ごしてしまうと、眠りが浅くなるなど、「睡眠の質」を悪化させてしまうのです。

●Let's Try 布団にいる時間は、必要な睡眠時間+30分が目安。
眠くないのに布団に入るのが習慣になると、脳が布団を"眠る場所"ではなく、"眠れない場所"だと認識してしまいます。長い時間眠っても、ぐっすり感が得られない方は、一度、思い切って睡眠時間を削ってしまうのも、良い方法です。

●Let's Try 思い切って、布団から出てみる。
布団に入ってもなかなか寝つけない夜は、明かりを落とした室内に戻り、ラジオや音楽などを聞いてリラックスするのがおすすめです。同様に、朝早く目覚めたときも、布団から出て朝刊を読み始めるなど、だらだらと布団にいる時間を減らしてみましょう。

 

「羊を数えると眠くなる」は迷信!?

●かえって頭が冴えてしまうことも。
「羊を数えると眠くなる」というのは、もとは外国でつくられたおまじないだといわれています。英語のSHEEP(羊)が、SLEEP(眠り)に似ているという説や、"シープ"と発音するときに、スーツと息が抜けてリラックスできるからという説があります。この理屈ですと、日本語で羊を数えてみても、あまり効果がなさそうです。数えることに一生懸命になり過ぎると、かえって目が冴えてしまうことも。良い寝つきのために何よりも大切なのは、入眠時間をリラックスして過ごすことです。

●Let's Try 4・7・8呼吸法を試してみましょう。
スムーズな寝つきにおすすめなのが、アメリカの著名な健康指導者であるアンドルー・ワイル博士が提唱する4・7・8呼吸法です。布団の中に入ったら、「4カウント吸って、7カウント止めて、8カウント吐く」といった呼吸を繰り返してみてください。次第に呼吸のリズムが整って交感神経の働きが抑えられ、リラックスした状態で寝つくことができます。数えることに一生懸命になる必要はありません。あまり力を入れ過ぎるとかえって目が冴えてしまうこともあるのでご注意を。

 

"ぐっすり昼寝"は、禁物!

●昼寝は、"うとうと"程度がベスト。
実は、昼寝は上手にとると、夜の「睡眠の質」を良くさせる効果があることが知られています。上手な昼寝のポイントは、長く深く眠らないこと。あまりぐっすり眠ってしまうと、夜の睡眠に悪影響が出てしまうからです。ぐっすり眠った感じがしなくても、目をつぶって"うとうと"するだけで十分。睡眠レベル1~2と呼ばれる、昼寝にぴったりの浅い睡眠をとることができます。

●Let's Try 昼寝から、すっきり目覚めるために。
昼寝で眠り過ぎないためには、「横にならずに椅子で寝る」「目覚ましをセットする」などが良いでしょう。また、コーヒーなどに含まれるカフェインは、飲んでから20~30分後に効いてくるといわれています。ですから昼寝前にカフェイン飲料を飲むと、起きた頃にちょうど効いてきて目が覚めやすくなります。

●Let's Try 適切な昼寝時間は、年齢ごとに違う。
昼寝の長さは、55歳以下の方は15〜20分、55歳以上の方は30分が目安。昼寝の時間帯は、昼12時~3時までが良いでしょう。うまく昼寝がとれれば、午後も活動的に過ごせて、夜の睡眠にも良い効果が期待できます。初めは短時間でうまく起きられなかったり、昼寝後に眠気が残ることもありますが、しばらく続けて昼寝上手を目指しましょう。

 

昼寝のコツをつかんで、夜もぐっすり!

●夕方以降の仮眠は、夜の睡眠を妨げる。
「仕事や外出でくたくたになって夕方に仮眠をしたら、夜眠れなくなった」という経験はありませんか?そもそも睡眠には、一定の時間起き続けることで"脳内に睡眠物質(または「眠気の素」)"が溜まっていき、これがある程度まで達すると眠りに落ちるというメカニズムがあります。夕方以降の仮眠は、この「睡眠物質(または「眠気の素」)が減ってしまうため、夜の眠りに悪影響を及ぼしてしまうのです。

●Let'sTry 寝る前の8時間は、眠らない。
就寝時刻の前8時間に昼寝をとるのは、厳禁です。寝る前の8時間は、しっかりと覚醒を保っておくことが、夜の良い睡眠のためには重要なのです。そうすれば、「夜、なかなか寝つけない」「眠りが浅くて、夜中に目が覚める」といったお悩みも解消できるはずです。たとえば、普段夜の11時に寝る方でしたら、午後3時以降の昼寝は禁物です。

●Let'sTry 夕方以降に、活動的に過ごす習慣を。
昼寝をしてはいけない夕方以降の時間帯。部屋の中でくつろいでいると、つい眠ってしまうようでしたら、外出の予定を入れたり、積極的に家事をするなど、活動的に過ごすように心がけましょう。また、夕方に30分の運動をすることは、夜の睡眠にも好影響を及ぼすことがわかっています。

 

教えてくれた人

三橋美穂(みはしみほ)

快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、テレビや雑誌等でも活躍中。