眠れるヒント 第3回:ぐっすり眠れないときのヒント
寝つきはいいけれど、夜中に何度も目が覚めてしまう。
そんな「睡眠の質」の悪化を解消するヒントをご紹介します。
“寝酒”は、睡眠の天敵!?
●寝る前のアルコールは、眠りを浅くする。
「寝つけないから、ちょっと一杯」という方がいらっしゃいますが、実は、良い睡眠にとってお酒は天敵。一時的に入眠を促すことはありますが、眠りを浅くしてしまうなど、良い睡眠を妨げてしまいます。また、アルコールには利尿作用があるため、夜中のトイレで目覚める回数が増えてしまうこともわかっています。
●Let’sTry 寝酒を習慣化しない。
寝酒のデメリットは、眠りを浅くしたり、トイレの回数を増やすだけではありません。
クセになって飲まないと眠れなくなったり、慣れが生じて酒量が増えてしまう場合があります。気分転換のための飲酒は夕食時までにして、就寝3~4時間前は控えましょう。
●Let’sTry 就寝前は、ノンアルコールビールがおすすめ。
就寝前にどうしても飲みたいときは、ノンアルコールビールがおすすめ。ノンアルコールビールにも含まれる麦芽には“GABA”と呼ばれるリラックス効果のある成分が多く含まれているといわれています。
お風呂は、良い睡眠のための準備体操。
●お風呂での体温上昇が、良い睡眠の決め手。
入眠時、人は体内の熱を外に逃がすことで「深部体温」と呼ばれる体の中心部の温度を低下させ、速やかに深い眠りに入っていきます。就寝前の入浴で、一旦体温を上げておくと、お風呂から出た後に、この「深部体温」の低下がスムーズにおこなわれ、良い睡眠が得られます。
●Let’sTry ぐっすり眠るには、シャワーではなく入浴を。
良い睡眠のためには、シャワーで済ませず、しっかりと湯船に浸かって体温を上げることが大切です。理想的な湯温は、少しぬるめの40度程度。リラックスしながら10~15分程度、ゆったり体を温めましょう。お湯の温度を熱くし過ぎると、交感神経が高まって目が冴えてしまい、かえって眠れなくなってしまうのでご注意ください。
●Let’sTry 入浴のタイミングはご自身の体質に合わせて。
暑がりの方は眠りにつく2時間ほど前、寒がりの方は1時間くらい前が目安です。入浴後、何分くらいすると眠気が強くなるか、一度確認してみてください。
寝苦しい夏。熱帯夜の快眠法は?
●寝苦しさの原因は、“体温調節”がうまくいっていないから。
熱帯夜が寝苦しいのは、暑さで入眠時の“体温調節”がうまく機能しなくなることが原因です。そもそも人は、体内の熱を外へ逃がし、「深部体温」と呼ばれる体の中心部の温度を下げることで、深い眠りに入っていきます。しかし、室温が高い夏になると、体内の熱を外に逃がすのが難しくなります。そのため、「深部体温」がうまく下がらず、ぐっすり眠れなくなってしまうのです。
●Let’sTry エアコンで、睡眠にベストな寝室環境に。
冷房を一晩中つけていると、体がだるくなることがありますが、これは「寝冷え」によるものです。半袖・半ズボンなどで肌の露出が多かったり、掛け布団が薄すぎたりすることで、体が冷えすぎてしまうのが原因です。一方で、エアコンをタイマーで切ると、室温が徐々に上がり、1時間ほどで蒸し暑さで目が覚めてしまうことも。中途覚醒を防ぐためには、熱帯夜は冷房を朝までつけっぱなしにしつつ、冷えすぎないような対策をとるのが効果的です。
●Let’sTry エアコンが苦手な方は、寝間着と掛け寝具の保温性を上げて。
まず、寝間着を長袖長ズボンにして、冷気が肌に直接当たらないようにします。そして、薄手の掛け布団を使う場合は、室温を25〜26℃に、タオルケットなら27〜28℃程度を目安に調整してみてください。室温が高めの場合、通気性の高い敷パッドを使うと、背中の蒸れが軽減され、快適に眠れます。
寒い冬。靴下を履くと、眠りが浅くなる!
●寝るときの室温は18℃以上に。
夏は冷房を使うのが当たり前になりましたが、冬に暖房をつけて寝ている人は少ないのでは? 近年、寒い部屋で過ごすことによる健康被害が大きいことがわかってきており、WHO(世界保健機関)は「室温は一日を通して18℃以上を保つ」ことを推奨しています。健康を守るためにも、寒い夜は暖房をつけて寝ましょう。エアコンを使うと空気が乾燥しやすいため、加湿器を併用するのがおすすめです。
●Let’sTry レッグウォーマーがおすすめ。
足元が寒くてどうしても寝つけないという方は、靴下ではなく足先の開いたレッグウォーマーを履きましょう。これなら、足を温めながら、体の熱を上手に放出することができます。
●Let’sTry 電気毛布は、就寝時にスイッチオフに。
夜通し電気毛布をつけっぱなしにするのも、「深部体温」がうまく下がらない要因になります。就寝前に温めておき、就寝のときにはスイッチを切りましょう。
“身動きしない眠り”と“寝返りの多い眠り”はどっちが良い?
●一晩に20~30回の寝返りが必要。
「身動きひとつしないくらいぐっすり眠った」という表現がありますが、実はこれは間違いです。寝返りは、血のめぐりを良くしたり、布団内の温度や湿度をコントロールするので、良い睡眠にはかせません。一般的に、一晩に20~0回の寝返りが必要だといわれています。
●Let’sTry 広めの睡眠スペースを確保しましょう。
寝返りの回数が少ないのは、就寝スペースの問題かもしれません。狭すぎる布団で眠っていたり、ペットと一緒に眠る習慣はありませんか?睡眠が浅いと感じたり、夜中に目が覚める方は、ゆったりとした睡眠スペースを心がけましょう。
●Let’sTry 寝返りしやすい、寝間着や寝具選びを。
上手な寝返りのためには、寝間着のサイズが重要です。腕を動かしやすい肩回りのゆとり、足を動かしても太もも周辺がつっぱらない、ゆとりあるものを選びましょう。また、冬場など重たい布団を何枚も重ねてしまうのも、体を固定してしまいます。一枚で、軽くて温かい羽毛布団に切り替えるなど、寝具選びも工夫してみましょう。
深い眠りをサポートする食品がある!
●“睡眠アミノ酸”と呼ばれる成分グリシン。
タンパク質のもととなる栄養素であるアミノ酸。その中のひとつで、魚介類などに多く含まれる、グリシンというアミノ酸があります。このグリシンに、睡眠の中で最も深い眠りである「深睡眠」をもたらすチカラがあることが、味の素(株)の研究によって明らかになりました。その機能から、グリシンは“睡眠アミノ酸”とも呼ばれています。
●Let’sTry 就寝前に、3000mgの摂取を。
ぐっすり深い睡眠を得るためには、“睡眠アミノ酸”グリシンを就寝前に3000mg摂取するのがポイントです。
【コラム】
寝汗は、良い睡眠のバロメーター。
これまで何度かご紹介していますが、人は眠りにつくために、体の中心部の温度である「深部体温」を下げていきます。これによって、“活動”から“睡眠”の状態へと入っていくのです。「ぐっすり気持ち良く眠っているとき、ふと夜中に目が覚めると汗をかいていた」という経験があるかもしれません。それは、「深部体温」を下げるために、体の表面から上手に放熱できた結果です。赤ちゃんが眠りにつくとき、手足が温かくなったり、うっすら汗をかきだすのも、このメカニズムが順調に働いている証拠です。うまく放熱して良い睡眠が得られるように、下着や寝間着は体を締め付けず、通気性・吸収性が良いシルクや綿の素材を選びましょう。一方で、夜中のいびきが増えて、それに伴って汗をかくようになった場合は要注意。“睡眠時無呼吸症候群”の可能性もありますので、一度医師に相談されることをおすすめします。
教えてくれた人

三橋美穂(みはしみほ)
快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、テレビや雑誌等でも活躍中。