眠れるヒント 第4回:朝からどんより&睡眠不足のときのヒント
朝が苦手なのは、体質だから仕方がない。早起きが続かないのは、三日坊主の性格だから。
そんな“思い込み”をしている方にぴったりのアドバイスをご用意。仕事が忙しくて、睡眠時間がとれない。
平日と休日で、睡眠時間に差が出てしまう。睡眠不足やリズムの乱れにお悩みの方に役立つ内容が満載です。



超簡単!朝からシャキッと目覚める方法。



●“目覚めのスイッチ”がオフ状態なのかも。
朝、いつも目覚めが悪いという方は、体内にある“目覚めのスイッチ”が入っていないのかもしれません。"目覚めのスイッチ"をオンにする方法は、太陽の光を浴びること。太陽の光は、私たちが考えている以上に明るく、曇りの日の光でも十分に目を覚ます効果が期待できます。
【屋内の光では不十分!】
“目覚めのスイッチ”をオンにするには、2,500ルクス以上の明るさが必要です。
●Let’sTry 午前中に30分以上の日光浴を。
午前中に30分以上、太陽光を浴びると、“目覚めのスイッチ”が入るだけでなく、夜になって眠りのためのホルモンであるメラトニンが分泌されるようになり、“すっきりで、夜ぐっすり”の好循環が生まれます。
●Let’sTry 日常生活で、上手に太陽光を取り入れましょう。
たとえば、通学や通勤時に地下通路ではなく屋外を歩いたり、朝食を窓際の席で外を眺めながらとったりと、ご自身のライフスタイルにあわせて太陽光を取り入れる工夫をしてみましょう。「お肌のために太陽の紫外線は避けたい」という方は、日陰を歩きながら、屋外の明るさに目を向けるだけでもOK。ポイントは、太陽の光を視覚的に感じることにあります。
「早起きが苦手」なのは、人間なら当たり前!?



●人の体内時計は、毎日少しずつズレていく。
“サーカディアンリズム(概日リズム)”という言葉をご存じですか?これは、人の体に備わっている、一日を刻む体内時計のことです。実は、この体内時計は、24時間よりも少し長い周期で刻まれています。そのため、毎日少しずつ夜更かしの方向にズレてしまうのです。「早起きは難しいけれど、夜更かしや朝寝坊は楽」と感じるのはそのためです。
●Let’sTry 太陽光が、体内時計のズレをリセット。
24時間+αの体内時計を、1日24時間の周期に合わせてくれるのが、太陽光です。朝、太陽の光をしっかり浴びれば、体内時計のズレがリセットされて、毎日すっきり目覚められます。
●Let’sTry 早起きのコツは“光”。
朝起きても眠気が抜けないという方がいますが、起きたときに強い眠気が生じる現象を睡眠慣性といいます。この睡眠慣性を減少させる方法のひとつが“光”を浴びること。その際、室内の明かりではなく、しっかりと太陽光を浴びることがポイントです。昼寝の後に眠気が抜けないときもこの方法はおすすめです。
【コラム】
夢を見るのは良い睡眠?それとも悪い睡眠?
「夢も見ないくらいぐっすり眠った」という表現がありますが、実はこれは間違いです。実際は、朝起きたときに覚えていないだけで、私たちは毎晩、夢を見ているのです。そもそも睡眠には、“ノンレム睡眠”と“レム睡眠”の2種類があります。一般的にノンレム睡眠が脳を休める睡眠で、レム睡眠が体を休める睡眠だといわれています。夢は、このうち眠りの浅いレム睡眠の時間帯にあらわれることがわかっています。たとえ覚えていなくても、夢は誰もが見ていますので、朝起きたときの記憶が鮮明だからといって眠りが浅く、悪い眠りだったというわけではないのです。逆に、もともと「睡眠の質」が悪かった方が、しっかり眠れるようになると、夢をよく見るようになる場合もあるのです。一方で、「朝までずっと考え事をしていた気がする」「起きたときに熟眠感がない」「疲労感が残る」という方は、眠りが浅いのかもしれません。他の回で紹介している睡眠時にリラックスする方法や、しっかり「深睡眠」をとる工夫を実践してみてください。
週末の寝だめは、“月曜の時差ボケ”を引き起こす!?
●日曜に昼過ぎまで眠ると、翌朝ボーッとしてしまう。
平日忙しくて睡眠時間が足りないために、土日に寝だめをしている方が多くいらっしゃいます。確かに、日頃睡眠不足の方にとって、その分の睡眠負債”を休日に返すことは大切です。ただし、休日だからといって、昼過ぎまで眠ってしまってはいけません。午前中の太陽を浴びずに過ごすと、その夜の就寝時間が後ろにズレてしまうからです。これは、ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)と呼ばれる現象で、「土日に十分休んだはずなのに、月曜の朝から疲労感を感じる」といった状態を引き起こす原因となっています。
●Let’sTry 寝だめは、平日の起床時間+1時間までに。
土日の寝だめは、平日の起床時間+1時間以内にすることが重要です。平日朝6時に起きる方は、遅くても8時には起きましょう。
●Let’sTry 朝は一旦起きて、昼寝などで補う。
1時間程度の寝だめでは、まだ足りないという方は、朝は一旦起きて活動した上で、昼寝で上手に補いましょう。朝からしっかり太陽の光を浴びておけば、体内時計がリセットされてすっきり目覚められることはもちろん、夜の眠りのためのホルモンであるメラトニンが分泌されて、しっかり眠ることができます。
忙しくて睡眠時間がとれない夜は、“深い眠り”を意識する。



●「深睡眠」がとれると、翌日が違う。
「自分の年齢や体質にあわせて、十分な睡眠時間を確保することは大切です。でも、仕事や家事で忙しく、どうしても睡眠時間を削らなくてはならない夜も、ときにはあるものです。そんなときは、「質の高い睡眠(=深睡眠)」をとるように心がけましょう。「深睡眠」がとれると、熟眠感が増して、溜まった疲労感も解消できます。また、翌日の眠気の改善や作業効率の向上も期待できます。
●Let’sTry 入眠後3時間以内の眠りがカギ。
心身をしっかり休ませて、翌日の活力を養ってくれる「深睡眠」。その大半は、入眠後3時間以内にあらわれます。忙しくて睡眠時間が短くなってしまうときこそ、特にこの「深睡眠」をとることを心がけましょう。ポイントは、就寝前1~2時間前に40度程度の少しぬるめのお風呂に入ること。一旦、体温を上げておくことで、就寝時に体の中心部の温度がスーッと下がり、スムーズに「深睡眠」がもたらされることが期待できます。また、「深睡眠」をもたらすサプリメントもおすすめです。
バタンキューは、本当に良い睡眠?



●就寝から睡眠まで、10~20分程度かかるのが一般的。
「目を閉じるとすぐ眠れる」からといって、良い睡眠がとれているとは限りません。就寝から睡眠に入るまでは、10~20分程度かかるのが一般的。目を閉じたら、すぐに眠れるという方は、慢性的に睡眠が足りていないのかもしれません。
●Let’sTry 睡眠時間が不足するときは、「深い睡眠」をとる工夫を。
仕事が忙しいときなどは、どうしても睡眠不足になりがちです。そんなときは、昼寝で補ったり、短くてもぐっすり深く眠る工夫をしましょう。本コラムの第3回「ぐっすり眠れないときのヒント」も参考に、良い睡眠を手に入れてください。
【コラム】
人は、眠りながら仕事をしている。
睡眠は、翌日のためにしっかりと心身をメンテナンスする時間です。特に、脳は睡眠中にしか休むことができません。しっかり眠って脳を休めることで翌日の集中力が上がり、日中の眠気も軽減されます。睡眠時間を2時間削った日の翌日の眠気は、体重50kgの方が酎ハイ約4.5杯分を飲んでいる状態と同等と言われるほどです。睡眠不足の翌日は注意力が散漫になり、作業効率が上がらないのもうなずけます。また、睡眠時の脳は休んでいるだけでなく、記憶の定着もおこなっています。脳内にあるデスクの上に散らかった「記憶の断片」が、睡眠中に引き出しの中に整理されるというイメージです。朝まで眠らずに一夜漬けをするより、しっかり眠った方が、記憶が定着するのはそのためです。
★おわりに
いかがでしたか?あなたの生活に取り入れられそうなヒントがありましたら、ぜひ、今日から始めてみてください。その時のポイントは、“完璧主義”にならないこと。あまり生真面目になり過ぎると、ストレスが溜まり、かえって眠りに悪い影響が出てしまいます。リラックスした気持ちで、気軽にチャレンジしてみてください。睡眠のお悩みは、ライフスタイルや体質によって人それぞれですから、誰にでも必ず当てはまる方法はありません。いろいろ試してみながら、ご自身にあった快眠方法を見つけていきましょう。ぐっすり良い眠りから、あなたの人生がますます輝くことを心より願っています。
教えてくれた人

三橋美穂(みはしみほ)
快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。わかりやすく実践的なアドバイスには定評があり、テレビや雑誌等でも活躍中。