プロカメラマン直伝! スマホ撮影“写心術”
※本記事は、2024年10月に雑誌「ハルメク」と共催した「横浜撮影さんぽ」イベント内で講演された内容から一部抜粋したものです。
横浜撮影さんぽでの様子
横浜撮影さんぽでの様子
横浜撮影さんぽでの様子
コツ1.たくさん撮る
いざ写真を撮る、となると緊張してしまうという声を多く聞きます。でも、普段メモを取るのに緊張するということはないですよね?なので、写真を撮るときも時間をメモすると思っていっぱい撮ってください。
現像するまでどんな写真が撮れているかわからなかったフィルム時代と違って、今はすぐに確認することができます。さらに、たくさん撮影しても現像代やフィルム代といったお金はかかりません。
実は写真もスポーツと同じで、たくさん撮れば撮るほど上達するものです。逆にいうと何年も撮っていないと、どんなに巨匠と言われた人の作品でも、残念な写真になってしまいます。
ぜひ、気軽にどんどん撮影するようにしてください。
コツ2.呼吸を止めて、連写
先ほど、写真はスポーツと同じとお伝えしたように、撮影するときにいちばん大切になるのが構え方です。今は写真加工ソフトなどで色や明るさなどを後から調節することができますが、手ブレだけは直せません。
最近は自撮りなど、片手で撮る方も多く、小さな画面ではきれいに見えます。でも、大きなスクリーンに映すとだいたいブレています。
手ブレを防ぐには、撮っている瞬間にできるだけカメラが動かないように固定することが大事。両手で支えるとか、テーブルに腕を載せるとかはもちろん、シャッターを押す瞬間だけ呼吸を止めるのもオススメです。
また、散歩途中に見つけた花を撮るなら10秒立ち止まってから撮る、風が強い日は立っていると風の影響を受けやすいのでしゃがんで撮るなど、なるべく体が動かないように工夫してみてください。
とはいえ、夕焼けとか暗い時、なかなか、体を固定してもブレてしまうというときは、連射機能で撮ると軽減できます。最初の1枚と最後の1枚は、指を動かすためブレているかもしれないですが、途中の写真はブレずに撮れますので、ぜひ試してみてください。
もうひとつ、撮影前にピントを合わせるのも忘れずに。撮りたいものに確実にピントを合わせるために、撮る前に必ずスマホ画面の撮りたいものをタッチしておきましょう。カメラのオートフォーカスが定まってピンボケ写真がなくなります。
コツ3.撮るものが決まった後も上下左右に動かしてみる
同じ場所でも構図が違うだけで、まったく違う見え方になります。そのため、撮影するときは構図にこだわってください。
よくやりがちなのが、人の頭の上から木が生えていたり、窓枠がちょうど重なっていたりするなど......。本来撮影した人を見てほしいのに、木や窓枠に目が行ってしまいます。
カメラを左右に少し動かせば解消できるものなので、撮影時には変なものが入っていないか構図にも注意してください。
ほかにも、たとえば花畑。人の目線から撮ると、花と花の間が空いてしまうので、インパクトが弱くなりますが、花が密集する位置まで目線を下げることで、花の印象が強まります。
人の場合は、上から見ると親しげに、真ん前だと素直に、下から見ると偉そうに写ります。これを利用しているのが、選挙ポスターの写真です。上から撮影したものが多く、下から撮影した写真だと落選するともいわれています。
ハンバーガーのような高さのあるものを撮るときは真横がオススメ。真上から撮るとせっかくの高さが表現できません。
コツ4.同じものを縦・横・真四角で撮っておく
縦長に撮るのか、横長に撮るのか、はたまた真四角で撮るのかによっても印象は変わります。横長に撮れば、全体の雰囲気が出て、少し説明調に。縦長の場合は、高さが出て遠近感を演出できます。真四角で撮ると、撮影物が中心に来るので、強調されます。
水平線の位置も、重要です。ふつうに撮ると、真ん中に水平線をもってきがちですが、地面を見せたければ地面側を、空を印象付けるなら空側を広く見せるだけで印象が変わります。だいたい8:2くらいの比率でおくとよいですが、そのときに見せたいものに合わせて9:1など大胆な構図にしても面白いです。
ぜひ、撮るものを決めた後も、前後左右上下にカメラを動かして、最適な位置を探したうえで、カメラの縦・横を変えて撮るようにもしてみてください。
コツ5.モノクロで撮影する
カメラマンを目指すとき、まず初めにするのが、モノクロでの人物撮影です。世界中どこのカメラ学校でも1年間はモノクロの撮影を教えています。絵画でいう木炭でのデッサンと同じですね。
モノクロで人物撮影をすると、服だとか、背景だとかの色に目が奪われず、被写体の表情に集中することができます。
また人の入る記念写真はなるべくバストアップで撮るように心掛けること。全身入れると、顔が小さくなって表情が分からなくなります。
これは撮られるときのポイントですが、複数人で撮るときは、できるだけ画面の中心にいた方がきれいに写れます。カメラの構造上、端に行けばいくほど婉曲しますので、「私は端っこでいいわよ」と逃げずに、真ん中にいく方がきれいに写れます。
モノクロ撮影が向いているのが曇りの日。曇りの日は光がやわらかいため、白から黒へのコントラストが緩やかになり、表情豊かなモノクロ写真となります。曇りの日は肌の色もでづらいので、人の写真もモノクロの方が味わいのある写真となります。
光の話でいうと、料理写真はなるべく太陽光の入るところで撮るのがオススメ。レストランなどで写真を撮るなら、窓際の席を希望しましょう。夜間なら、少しでも照明が多く入るところを選びましょう。
どんなプロよりも大好きな人が撮った写真がいちばんかわいい
お子さんの写真をかわいく撮ってほしいと言われることもありますが、カメラマンは上手に撮れても、お母さんよりかわいく撮ることはできません。
被写体は撮る人の鏡のようなもので、カメラマンがニコッと笑って撮れば、自然な笑顔が撮れます。反対に緊張した顔をしていると、その緊張感が写真にもでてくるのです。
つまり、大好きな人が愛情をもって見つめてとった写真がいちばんかわいく撮れますし、「どこから食べるか悩むほど、おいしそうで……よしここから食べよう!!」と思って撮る写真は、おいしそうに写るのです。
スマホはいつでも手元においておけるので、ふとした瞬間を切り取るのが得意です。たとえば、愛猫のあくびの様子や子どもの面白い表情など、いますぐ撮れるのがスマホならでは。
また、カメラだとレンズがあるなど、形が凸凹しているので、ペットなどには警戒されてしまいますが、スマホは板状のため、警戒されにくいのもポイント。ペットが心落ち着けている様子や甘えている様子はスマホの得意領域です。
自分や家族の記録代わりにどんどん撮影していくことで、あなたの撮影技術もどんどんあがっていきますよ。
教えてくれた人

相原正明さん/
写真家・タスマニア州親善大使
(Friend of Tasmania)
1958年東京都出身。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影する。卒業後、広告代理店に勤務。8年間の代理店勤務ののち退社。オートバイによるオーストラリア単独撮影ツーリングに向かい、彼の地にて大陸とネイチャーフォトの虜になる。撮影ではホテル等は使わず、必ず撮影場所でキャンプして大陸と一体に成ることを、心掛けている。現在も一年のうち2~3ヶ月はアウトバック(オーストラリアの荒野)で撮影をしている。現在は落語を中心とした伝統芸能の世界も撮影している。