そもそも、アジアン粥って?
2024年、アジアン粥がトレンドワードとして各種メディアで注目を浴びています。
トレンドとして並べられる他のお料理は、今まで食べたことのないような新しく創造されたものばかり。
アジアン粥とは一体?そして、何が新しいと考えられているのでしょうか?
そもそも、おかゆは世界中に存在しています。
西洋にもおかゆはありまして、ヨーロッパ・北欧のミルク粥、英米の麦粥(オートミール粥)、ロシアの蕎麦粥など、それはそれは多種多様。西洋ではサッと食べる簡易な朝食であったり、療養食であったり。日本でも古き良き家庭料理というイメージ根強くあります。
これらのおかゆは、素材の味を生かしたシンプルなものが多いため「家メシ要素」の傾向が強く、調理されたおかゆを「買うもの」「外で食べるもの」と捉えている人はそう多くはありません。
一方、アジアの国々のお粥は、屋台やレストランで食べる「外メシ要素」が強いです。
大鍋で対流を起こしながら米粒を崩したり、油を使って乳化をさせたりと、かなり凝った作り方をします。
お味もスープや出汁で炊き上げる旨味の強いものが主流。手順も材料も複雑であるため、それぞれの家で作る料理ではなく、大量調理に適したお料理です。プロが作る日常の外食料理という視点は、日本の感覚で捉えると新しいですよね。
また、アジアン粥が新しく思える理由として、日本語が粥と雑炊を区別する点も関係しています。
多くの国では粥と雑炊という言葉を区別せず、雑炊的なお料理も粥のひとつのジャンルとして考えられています。ちょうど英語が兄と弟を区別せずに「ブラザー(brother)」と一語で括っている感覚です。
例えば香港では鍋のシメにご飯を入れる料理の英訳は「rice porridge(お米のおかゆ)」でした。
タイの冷やご飯をスープで煮込む料理も「rice porridge」。韓国には甘いおかゆもありますし、中国にはお米ではない穀物のおかゆが多数存在しています。
日本語の「粥」のイメージでおかゆの世界を見渡すと、そりゃもう大発見の連続なワケです。日本とは違う当たり前がたくさんあるから、おかゆの世界は新しく、おもしろいのです!
▼プロフィール
お粥研究家 鈴木かゆ 1993年生まれ、お粥研究家。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動。JAPAN MENSA会員。